遺産相続

皆さんは、「エンディングノート」をご存知でしょうか?主にご高齢の方などが、「もしも」の時に備えて生前に、家族などに向けて、自分の意思を書き残すノートのことをいいます。エンディングノートは、専用のノートが販売されるなど、近年盛り上がりを見せています。

遺言書は、一般的に高齢者が親族に向けて書き残すイメージがありますが、民法961条に定められている通り、満15歳以上になれば、いつでも法的な効力を発揮するため、15歳以上であれば誰でも書くことが可能です。そして、遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。

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自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言」とは、そのままのとおり自分で書く遺言のことです。
「自分でできる」という点から簡単にできると思われる方も多いかもしれません。しかし、法律で決められた作成方法があるので、その方法が守られていない文書の場合は、たとえ「遺言書」と書いてあっても通用しません。

遺言書を作成する基本的なポイントは以下のとおりです。

・「遺言書」と記入する
・作成した日付を正確に記入する
・遺言書の内容はすべて自分で書く
・署名、押印する
・封筒に入れて、封印までする
・遺言書は1人1通が基本

その他にも、「不動産は登記簿謄本の通りに記載する」「銀行名、支店名、口座番号を記載する」など、非常に細かい規定が設けられています。

曖昧な書き方・表現では遺言書としての役割をなさないため、記載内容は具体的に書き記す必要があります。また、遺言書を家族に見せることを避けるがゆえに、わかりにくい場所に隠している人もいるようです。あまりにも隠し過ぎて、「遺族が遺言書を見つけられない」ということもあるので、注意しましょう。

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「公正証書遺言」とは?

img03一方、「公正証書遺言」とは、専門家が遺言書を作成する方法です。
遺言作成時には、公証人と呼ばれる専門家が確認して作成するため、後から「遺言の能力の有無」でもめることが少なくなります。

また、自筆の遺言書が自宅で保管されるのに対し、公正証書の原本は公証役場で保管されることになるので、「遺言書が見つからない」「親族に改ざんされたかもしれない…」などの心配もありません。

ただし、作成においては、公証人に作成を依頼するだけではなく、証人が2人以上必要になるなど、自筆証書に比べて手間や時間がかかってしまうことは、覚えておく必要があるでしょう。

エンディングノートと遺言書はまったく別物

img04エンディングノートを遺言書代わりとして考えている方も多いようです。実は、エンディングノートと遺言書はまったく異なるものです。遺言書には法的効力のある文書になるため、規定に基づいた書き方を行う必要があります。

遺言書と比べて、エンディングノートは、自由に書くことができます。そのため、たとえば法的拘束力は必要なくても「家族にはどうしても言っておきたい」という内容なども気軽に書くことができます。

しかし、たとえ本人が、遺言書をエンディングノートの代わりのつもりで作成しても、法的な拘束力を発揮するためには、意思能力、遺言書の書き方が求められるので、それを満たしていなければ遺言書としての取り扱いは難しくなってしまいます。遺言書とエンディングノートは、役割が異なるため、その違いを知って、書きわけることが大事。1点でも不備があれば、有効ではなくなってしまうので、注意しましょう。